待ちに待った開幕戦。クラモフスキー監督のサッカーを見るにはやはり現地観戦だろうと思い、防寒対策・コロナ対策と万全の準備をしてアイスタへ行きました。
FC東京サポーターがたくさん来てくれていて嬉しいですね。
ただ、彼らを笑顔で帰京させてしまったのが心底、悔しいです。
スコアだけ見れば1-3。『やはり清水は清水か...』と、『守備は改善されてないのか』と思った方。
ほんとに試合を見ましたか?ハイライトだけじゃない?
そう言いたくなるほど、エスパルスに足りなかったものは”結果”だけでした。
清水のミライを感じさせたクラモフスキーサッカー
”魅惑のドリブラー” 中村慶太の新境地
開幕戦、スタメン発表時のサプライズと言えばボランチに竹内ではなく中村慶太の名があったこと。
竹内は怪我による出場微妙との報道があり代役の名は何名か出ていましたが、中村慶太の名を出した人は一人としていないだろうと言い切れるほどのサプライズでした。
彼の本来のポジションはサイドアタッカー。ドリブラーとしてボールを持って仕掛け、パンチのあるミドルを放つというのが特徴の選手をボランチで起用したクラモフスキー監督の狙いは素人の自分には分かりません。
ただ、この起用は”正解”でした。
正解だと感じた一つ目の理由が彼がドリブラーであること。ドリブラーはボールに多く触ることで自分のリズムを作り出します。
ボランチに入った中村はピッチ上のあらゆる場所に姿を現し、ボールを多く触ることでエスパルスに速い攻撃のテンポを生み出しました。
またドリブラーなので相手を抜く能力に長けています。ボールを受け、奪いに来た相手をドリブルで抜く。するとそのスペースを使って前進することが出来ます。
リスクのあるプレーですが、『(マークを)を剥がす』という有効的なプレーです。彼はこの仕事をいとも簡単にこなしチームを前進させた。
20歳 西村は”和製ポグバ”だ
新生清水の初陣となったルヴァンカップの川崎戦に続き、リーグ戦でも開幕スタメンを勝ち取った20歳の大型ボランチ 西村。
川崎戦ではミスが目立ちアピールは出来なかったが、東京戦で彼は間違いなくピッチで一番”目立っていた”。一週間前とは逆に良い方で。
川崎戦では課題と共に『やれる』という自信が付いたのかもしれません。
ボランチを組んだ中村が色々な場所に顔を出すのに対し、西村はCBの間や脇に落ちてボールを受けゴールを奪うための”初めの一歩”を踏み出す係とでも言いますか。
そのため西村のところでボールを失うと失点に直結してしまいます。
しかし、東京の厳しいプレスを受けようとも彼は冷静にボールと味方を動かし、ピッチに落ち着きを与えました。
ただ彼を”和製ポグバ”と呼ぶのはスラっとした長い手足と身長という風貌だけではありません。
機を見て大胆に前線へ飛び出す迫力とアイデアを持っているから。
東京戦でも何度かペナルティエリア外でループでのパスやアウトサイドに掛けたクロスなど本家ポール・ポグバのような大胆さのあるプレーを見せてくれました。
”ご飯のお供” ごはんですよ、のような後藤
白米に何か足りない時、食卓に『ごはんですよ』があれば嬉しい。
今季、大分から加入しトップ下に入った後藤はそんな存在でした。
ボールを受けた前線の選手のすぐ近くには必ず後藤が。
クラモフスキー監督が掲げる”超攻撃的サッカー”は選手の距離感が命です。
そんな中で後藤は仲間のためにポジションを何度も修正してサポートをし、何度も前線へスプリントをしてスペースを作り、チームの”潤滑油”となっていました。
エスパルスの攻撃のほぼすべてに後藤は関わっていたと言えます。
また守備においての働きも一級品でした。
”超攻撃的サッカー”を支えるのは”超切り替えを速くすること”です。
ボールを失ったら、自軍のゴールより遠い場所で奪い返し失点のリスクを減らす。
前線の選手がいかにプレスにいけるかがこのサッカーを左右するというのは、後藤の動きを見ていれば分かります。それを90分間やり続けた彼には大きな拍手を送るべきです。
新戦術の影には間違いなく光が差していた
サイド攻撃のクオリティ
この試合、エスパルスは何度も相手陣地のペナルティエリアの脇に陣取りゴールに迫っていました。
しかし、迫ってはいましたが、結果クロスからは得点を奪えず。
これが修正すべきポイントの一つ目。
特に攻撃としてシンプルさが欠けていたところだ。
FC東京のCBは森重と渡辺、共に空中戦に強さを持つ。
彼らがセットした状態でクロスを上げても競り勝つことは容易ではありません。
つまり彼らがゴールに向かって戻っている時にクロスを上げる必要がありました。
その為にはあまり手数を掛けずに早め攻撃を仕掛けなければいけません。
今の清水が目指すのは”より速く、よりシンプルに、より相手が嫌がるプレー”。
セットプレーで沈めることが出来るチームに
本音を言うと、自分の感覚としてはここ数シーズンのエスパルスを見ていて『セットプレー』に対する得点期待値は20%程です。
逆にセットプレーからやられるシーンは親の顔より見たかもしれません。
これが修正してもらいたい2つ目のポイント。
特に『コーナーキック』はこの試合を通して手前のDFに引っかかったり、GKにキャッチされるシーンが目立ちました。
GKにキャッチされると被カウンターのリスクを高めることにもなります。
確かにエスパルスの選手で抜きん出てセットプレーに強い選手がいるかと聞かれると即答は出来ません。
だからこそ今季は”誰かが触れば入るボール”をキッカーには期待したいなと。
合わせるのではなく、合わせろという強気なボールを。
西澤なら絶対蹴れます。
ピラニアとディレイの使い分け
最後の修正ポイントがプレス強度の使い分けだ。
この試合、スコアとは別にFC東京に対して圧倒した理由が切り替えの速さだ。
特にボールを奪われた時の。
奪われた位置付近にいる選手が”ピラニア”のようにボールに襲い掛かることで、何度もカウンターを防ぎつつ確実に奪いきれることに成功していた。
ただ、これを90分間続けるのは不可能に近い。
事実、この試合でもエスパルスは残り20分で明らかに切り替えの速さ、プレスの強度が落ちた。
そこから3失点。
選手としても前半からボールを奪い返す”成功体験”を繰り返したことで、チームとしての体力のペース配分を間違えた感は否めない。
マリオカートで例えるならば、最初から飛ばしすぎると、ゴール直前で青甲羅にやられてしまう。
70分の100%(プレス強度)よりも、90分の85%(プレス強度)を使えた方が勝利には近くなる。
ただ、あの”ピラニア”のようなプレスは素晴らしかった。
感想
『プロなら結果』と言われかねませんが、この試合にはそこは関係ないのではないかと。
試合終了後、選手が挨拶に来た時の拍手がすべてを物語っていました。
変化には必ず痛みを伴います。ただこの痛みは永遠ではありません。
目先の結果だけを追い続け、ブレてしまうことの方がよっぽど危険です。
『同じ船に乗ったが最後、例え船が沈もうとも』
ミライへの一歩一歩を共に楽しみましょう。
OUR ORANGE, OUR PRIDE.